しかし 映画化を試みるが主演探しに失敗
ジェームズ・ボンドといえばショーンコネリーがはまり役、67年には既に5作品が公開されていて不動の評価を受けていた。カジノロワイヤルはシリーズ第1話でフレミングもまだ無名だった頃に映画化権が売られていました。転売後に買い取ったプロデューサーのチャールズK.フェルドマンは製作にあたり王道の007としてショーン・コネリーに当たったようですが断られたので余程悔しかったのでしょう、それならと路線変更、超オールスター起用、7人ものボンドが出てくる豪華パロディにしてしまいました。驚くのは オーソン・ウェルズ、デヴィッド・ニーヴン、ピーター・セラーズ、ウディ・アレンなどの超豪華俳優陣、ノンクレジットでしたがチョイ役でジャンポールベルモンドまで登場、監督もサスペンス担当とかコメディ担当とか5人も使い分ける総力戦、予算1200万弗と当時では破格の規模の大作ですね。ウルスラ・アンドレスは本家の初代ボンドガールだし、デヴィッド・ニーヴンはイアン・フレミングがボンドのイメージと言っていたそうで本家への対抗心剥き出し。ではさぞかし面白いかと言うと、007としては最低、必然性の無い美女軍団、騎兵隊にインディアン、カジノで手品、突然UFO出現と理解不能、お色気たっぷりのナンセンス・コメディとして観るならありかも知れませんがもはや別物ですね。
主演のダニエル・クレイグは『典型的なボンド映画なら出ようと思わなかった』という。娯楽映画であるとはいっても、映画のはじめには世界的危機があるというのに、最後には観客がそれすら忘れてしまうほどハッピーエンドになっている映画はおかしいと彼は言ったそうだ。
最初から最後まで意味不明な作品。007の原作シリーズの1作目をコメディにして映画化。原作と同じ要素はあるんだろうか?美女が多数出演してなければ、見る価値全く無しだわ…とりあえず、マネーペニーが可愛かった( *˙˙* )そいえば『ルパン三世 ルパンvs複製人間』を思わせるシーンが有り。この作品の影響受けたんかな?
「俳優陣の演技力が凄い」「セットに凄くお金をかけている」「細かな点に光るものは非常に多い」「好意的に見たい、好感度は高いと感じさせる」それなのに「笑えない」「ストーリーの繋がりが悪い」「話の脈絡が追いにくい」結果的に「視聴が苦痛である」なんだか「多種多様な山ほどの高級食材にBBQソースをぶっかけてハンバーガーにしてしまったみたいな映画」というのが、一緒に鑑賞した息子(18歳)の感想である。なかなか正鵠を得ていると思う。その年齢では、出演陣の豪華さがわかるはずもないし、かくいう私も彼らを見て「見慣れた」と思える感覚は無い。オーソン・ウェルズを身近に感じるようになったのは幼少期に毎日見ていたピンポンパンかポンキッキのCM帯で毎日のようにイングリッシュ・アドベンチャー「追跡」の広告が流れたからだ。名前を聞けば「ああ!あの名作の!」とは思うが「懐かしい〜」というほどの思いはない。ざっと出演者を羅列すると、デヴィッド・ニーブン(80日間世界一周、ナバロンの要塞、嵐が丘)オーソン・ウェルズ(第三の男)(監督作・市民ケーン、マクベス、オセロ)ピーター・セラーズ(ピンクパンサーシリーズ)ウッディ・アレン(アニーホール、ミッドナイト・イン・パリ)ウィリアム・ホールデン(戦場にかける橋、タワーリングインフェルノ)シャルル・ボワイエ(裏街・ガス燈)ジョン・ヒューストン(監督作・白鯨、マルタの鷹)ウルスラ・アンドレイ(007第1作ドクターノウのボンドガール)デボラ・カー(王様と私)なんとまぁ、錚々たるメンバーか!こんな大物達が全力でパロディやコントを繰り広げているので「彼ら」をよく見知っている世代にとっては、ただそれだけで笑いが取れるのだろう。シリアス派・正統派大物俳優、或いは新進気鋭の喜劇役者が、まさかと思うようなバラエティに出演し、身体を張ってコントを演じてくれる。この作品の「笑い」はそういうところにあるのだろうから「俳優陣」を充分に知らなければ笑えないのだ。1967年の時点ですでにビッグスターだったメンバーだ。現在、本当の意味で純粋に笑えるのは後期高齢者世代の方々だけなのだな。まぁ、1980年前後の「オールスター新春かくし芸大会」の雰囲気がわかる方は、そーゆーものだ、と思って頂けばよろしいんじゃないかと。本当は、まだ「小説007」が無名だった頃、007第1作目「カジノロワイヤル」の映画版権を1番最初に取得したのはこちらなのだ。しかし、映画化を試みるが主演探しに失敗。そうこうしているうちにイオンプロの007が世界的大ヒット。そこでイオンプロに「カジノロワイヤル」の合作を持ちかけるも、交渉決裂。それならばと、ショーン・コネリーに直接交渉したが、コネリーは「半年に1度はボンド以外の役を演じたい」と、タイミングが合わずこれまた失敗に終わる。数々の失敗に落胆したハリウッドの重鎮フェルドマンは、いっそイオンプロのボンドシリーズを思いっきり茶化したパロディ映画を作ることにした。イオンプロには出来ないであろう「ハリウッドの超オールスター達を起用」して・・・音楽までもバート・バカラック(「明日に向かって撃て」などヒット曲多数)を起用と、実に豪華で素晴らしい。これでストーリーさえ!脚本さえしっかりしていれば、番外編として007ファンの記憶に残る1作品となっただろうになぁ、、、。残念ながら「おふざけを名優達が演じるギャップ」&「コネリー・ボンド1〜4作への皮肉めいたパロディ」以外に、作品単体としての優れた点は無い。最近の言葉で言うなら「名優達の無駄遣い」だ。ただ、出演陣が「非常に楽しそう」であった事は間違いない。ハリウッドスター達が全力で楽しみ、それを観る観客達も全力で笑っていたのならば、その時代に存在する価値はあったのだろう。映画史料の一つとして観たい、という方以外にはお勧め出来ないが、ある意味「貴重な作品」である事は間違いところである。007パロディ作品としてオースティンパワーズやキングスマンにも何らかの示唆は与えているものと思われる。
最小限の脇役構成にしている所も、スパイ映画としては成功している例ではないかと思う。
以上、映画「007 カジノ・ロワイヤル」のあらすじと結末でした。
シリーズ番外編。1967年の作品。以前シリーズ全レビューした時、本作だけは見ていなかった。WOWOWでシリーズ一挙放送の時もナシ(『ネバーセイ・ネバーアゲイン』はやったのに…)、NetflixやU-NEXTにもナシ(他の配信にはあったそうだが)、それどころか近くのレンタル店にすら置いていない。見たくても見れない、私にとっては“幻の007”。先日、BSでの吹替放送を録画して鑑賞。遂に見れた!その感想は…前々から“珍品”とは噂に聞いていたが、噂に違わず。見れたのは嬉しいが、これをずっと見たいと思っていた自分がちと悲しくなった。こちらもちゃんとイアン・フレミングの小説を原作にしていながら、ダニエル・クレイグ版とは全く別物。原作は読んだ事無いが、それでなくとも分かる原作トンデモ改変。『ダイヤモンドは永遠に』の時、敵をスペクターに改変して原作側は怒りながら、本作はOKなの…??あ、『カジノ・ロワイヤル』だ!…と、ボンドの初任務、ハードでスリリング、ヴェスパーとの悲恋を期待しようものなら…、まあ敢えて言わないでおこう。各国の諜報員が殺される事件が続き、Mらは引退したボンドに復帰を頼む…。…という一応ストーリーはあるのだが、それも形だけ。実際の中身は、ストーリー性完全破綻、登場人物たちの意味不明な言動、笑えぬギャグや珍シーンの連続…。一応ル・シフルとのバカラ対決やヴェスパーも登場するが、もうしっちゃかめっちゃか。“物語”としての機能は果たしていない。おふざけおバカムービー。これが噂の、007パロディ・コメディの衝撃か…!キャストだけはシリーズ最高級。ピーター・セラーズ、デヴィッド・ニーヴン、オーソン・ウェルズ、ウディ・アレン、初代ボンドガールのウルスラ・アンドレス…。デボラ・カー、ウィリアム・ホールデン、ジョン・ヒューストン、ピーター・オトゥール、アンジェリカ・ヒューストン、ジャクリーン・ビセット、ジャン=ポール・ベルモンド…。メインから助演、ゲスト出演に至るまで、見よ!信じられないくらいの超豪華&ビッグネーム揃い!そして信じられないくらい、皆がおバカ演技を披露している。考えによっちゃあレアかも…??007が7人も登場。正確には、本人と“007”を名乗る人物が6人。007が7人居るのなら、監督も5人。出演もしている巨匠ヒューストンも。が、これがいけなかった。全く以て連携していない。当初はイオン・プロ同様、本格スパイ映画として作るつもりが、様々な事情により断念。パロディに切り替え。コロムビアはコロムビアなりに、奇を狙ったパロディ・コメディでイオン・プロに一矢報いる気でいたかもしれないが…、言うまでもなく本家には遥か遠く及ばず。番外編としても『ネバーセイ・ネバーアゲイン』の方が面白い。やっぱり『007』は、時々ベタでチープになろうとも王道スパイ活劇の方がいい。それに、『007』のパロディなら『オースティン・パワーズ』があるし。その『オースティン・パワーズ』の原点、バート・バカラックの軽快な音楽、二度と見る事は出来ない超豪華キャストと“007”に免じて、超甘々の採点2!本来だったら…。
TBSが立ち上げたドキュメンタリー映画の新ブランド「TBS DOCS」の大久保竜プロデューサーに話を聞いた。